変数変換とヤコビアン
パクりブログ撲滅祈願コンテンツ更新第3弾
単刀直入に言うと、このエントリーは確率密度関数と変数変換コンテンツの続きではあるがよくわかる慣性モーメントの更新コンテンツも兼ねている。
ディレクトリ構造としては数理統計学の配下にあるサブカテゴリーの確率の数理の中で以下のように配置してあるエントリー(コンテンツ)になる。
数理統計学(カテゴリ)
┗確率の数理(サブカテゴリ)
┗ヤコビアン@(このページ)
┗確率密度関数と変数変換
当サイトは元々は物理専門のサイトであり物理専攻の人からからすれば微分積分、解析力学などで使われるものがなぜ数理統計学の多変量解析に?と面食らう人もいるだろうが、このヤコビアンというのは多変量解析においてよく登場し、しかも結構重要な役割をはたしている。
これに関しては順を追って解説していこうと思う。
ちなみに将来データエンジニアといったシステムエンジニアを目指している人などは多変量解析の知識を必要とされる場合があると思うが、それに対応した際にこうした部分の知識があればのちに役立つ内容になっていると思う。
よくわかる慣性モーメントのヤコビアンコンテンツの追加ドラコン
このドメイン下での数学物理関連のコンテンツは基本的にドラフトコンテンツであり、今後本サイトのほうへ移す際の査読記事みたいなものを置く場合もある。
今回のコンテンツはそれにあたる。
前々から言っているようにサテライトサイトのよくわかる慣性モーメントを筆頭にして、それ以外にもサルでもわかる線形代数やよくわかるベクトル解析といったこのドメイン下のコンテンツ盗用が問題になっており、その対策としてのコンテンツ更新及びその拡充の一環になる。
更新をしていない理由
もともと本職が忙しいというのも本音としてあるが今までコンテンツを拡充していなかったのは難しい理論や考え方などは除いてWebサイトへの入り口というか間口を広くしておきたかったというのがある。
例えばよくわかる慣性モーメントに関する派生知識として“慣性モーメントテンソル”などといったものがあるが、あまり数学に慣れ親しんでない人の場合その単語(テンソル)が出てきた時点である種の“客離れ(サイトに訪れてもすぐに離れる)”になる可能性もある。
こういったことを避けるために私が運営する数学物理学コンテンツはなるべく難しい内容を避けつつ簡潔かつ初等レベルで理解できることを目標としたサイト作成を心がけているといった事もその一因になっている。
つまり基本としては道具としての数学を身に付けてもらいながらその他のコンテンツ、とりわけ特亜に関するコンテンツにも興味を持ってもらうための布石となるべく作られており、その対象は一般社会人をはじめとし、中学・高校生といったまだ10代の学生さん、さらに欲を言えば小学生でも意味程度なら理解できて興味をもって見てもらえるものを目標としたコンテンツ作成を主眼においている。
しかしながら昨今のコンテンツ盗用の状況を鑑みればサイトの内容を常に更新し、ある程度の専門性を持たせながらコンテンツの量を増やしていくことが一番の対策になるというのが実情としてあり、今後もコンテンツの拡充をしながら本来のサイト作成の方向性を少し変更していかなければならない時期かなと考えている。
よくわかる慣性モーメント、パーマリンク更新第3弾
ということで前回、第1弾、そして第2弾として円錐の慣性モーメントを取り扱ったが、今度は第3弾としてヤコビアンを取り上げることにした。
題名としては「変数変換とヤコビアン」であるが、これはもともと数理統計学の中のコンテンツ、「多変量確立ベクトルの計算」 → 「確率密度関数と変数変換」、といった内容の続きとして考えていたコンテンツになる。
このヤコビアンというものに関しては「よくわかる慣性モーメント」の中のサブカテゴリコンテンツにも「ヤコビアン」というのがあり、これに付加コンテンツとして取り上げる予定になっている。
習うより教えるほうが難しいという典型例━ヤコビアン
一般的にというかまあなんでもそうなのだが自分で理解するよりも他人に教えることのほうが難しいというのはよく言われるが、物理学における慣性モーメントの周辺知識としてわかりずらい、または他者に教えて理解してもらうのがやや困難なものとしては先ほど上げた慣性モーメントテンソル以外のものとして今回取り上げるこのヤコビアンというものになる。
道具として使うだけならば線形代数における行列式の計算ができればそれで特に問題がないものになるが、座標変換をする際の写像においてなぜヤコビ行列というものが出てくるのか、といったその根本的な考え方と説明になっている。
はいはいそれではまずヤコビアンにおける変数変換とはなんなのかから説明していきましょう。
ただし重複するがあくまでドラコンの域を出ないのでかなり粗削りで、しかも独自の考察による内容になっているのでそのへんは注意して閲覧するように。
ヤコビアンとは
改めて説明すると多変量解析において重要な確率分布で多変量正規分布というのがあり、これを導く際に重要なものとしてヤコビアン(関数行列式)というのがある。
変数変換における重積分の公式では以下のようになっている。
上記式の絶対値で囲まれているがそのヤコビアンに当たる。
一般的に座標系といえばで与えられた場合通常デカルト座標系といったものを使う。
ここでそのに対して新たにといった関数を考えてその変数をと置き、それがとは可逆的な関係であるとして次のような式を考えることにする。
上記の関数において平面上の点が平面上のに対応するとした図形を考えた場合、一般的にこれを写像という呼び方をする。
平面上の点を起点にした横の長さ、縦の長さがの長方形の微小面積を考えてその頂点をそれぞれとして、次のような微小面積、
この微小面積における長方形の面積をと置くことにする。
上の図において平面上の点を平面上に落とし込んでいった場合、拉げた形の平行四辺形といったものになる。
そこで次のようにといった変化量が近似的に次のような関係性を持っていると考える。
ここでにおいてそれぞれをで全微分を施すと次のような式が求まる事になる。
平面から平面上にそれらを落とし込んでいった場合ひしゃげた平行四辺形になるが先ほどのにおけるの面積が限りなくに近づいていくものと考える。
そうすると最初はひしゃげた平行四辺形がだんだんと以下のような平行四辺形になっていくと考えられる。
ヤコビ行列式の幾何学的な説明
ヤコビアンの幾何学的な意味を考える場合、まず平面上の点における長方形の頂点から始まる面積素分をとし、これに対応するのが平面上における面積をと置く。
さらにここで平面上の微小面積素分をとし、また平面上の面積素分をとする。
そうすると、といった面積素分どうしは写像といった対応関係があるので次のような相似関係式が導かれることになる。
上記相似関係の式に関して次のように変形していく。
式を見ればわかるように右辺の計算部分はに対してがどの程度の比率になっているかを示していることがわかる。
右辺に関しては変数が多変数になり絶対値をとってさらに変形すれば以下のような関係式が求まることになる。
上記式において絶対値を取るのは対応する座標系に対してその値を合わせるため。
、を元の微小量変化量に戻せば次のような関係式が導かれる。
上記関係式は平面上の図形が平面上における写像にて写しだされた場合における関係性を意味するものであり、という面積素分が平面上においてどの程度のスケール変換率になっているかを示しており、右辺の絶対値で囲まれた部分は単刀直入に言えば平面上における平行四辺形の面積素分になる。
平行四辺形の面積を求める
平面上の点を平面上のに対応させた場合における新たな座標系の微小面積が等しくなるべくどの程度のスカラー量を作用させればいいかという変換率そのものはUV平面上に置ける平行四辺形の面積を示していることがわかった。今度はこの新しい座標系に置けるその平行四辺形の面積を求めていく。
のに関するその座標点は以下のようになる。
これに対し、新しい座標系における平面上の微小面積における各点の座標は、
、
であるので、の座標点は以下のようになる。
図の平行四辺形の面積を求めていく。この時において必要になるのが次の3点、
になりこれを使って図の平行四辺形の面積を求めていくことにする。
先ほどの平行四辺形の面積は線形代数における解析幾何によって次のようになる。
ただここで便宜上次のように置くことにする。
これに先ほどの値を代入してこの行列式の計算をしていくことにする。
となるが通常の行列式計算では上のほうから余因子展開していくがここでも便宜上、かつ計算の簡略化のため行列式の性質より次のように展開して計算していっても特に問題はないニダ。
これらの結果によって結局のところ右辺の絶対値で囲まれた部分はスケール変換率に相当する2変数におけるヤコビアン、
に相当することがわかる。
変数変換ヤコビアンによる具体的な座標変換における計算例
具体的な例としてここでは2変数変換における座標変換で平面極座標というのを取り上げてみる。
まず、上記の結果によって導き出された2変数におけるヤコビアンを使った座標変換によるある座標系から考える別の座標系への変換を考える場合、以下のようなヤコビ変数変換をとるものと考えれらる。
上記座標系において点の位置は、なのでその距離は、
考える座標系は距離と角度によって決められる座標系と考えた場合、その座標系はという座標系に対してどの程度のスケール変換率によって与えられるかということを考える。
上記のような写像を考えた場合、以下のヤコビアンの式、
こうした場合の2変数におけるヤコビアン行列式の中身を表すと以下、
と表現されるので先ほどのの以下の式、
これに関してでヤコビ行列のそれぞれの成分に対しての計算をしていけば次のように求まることになる。
上記のように求まるのでヤコビ行列式は以下のようになる。
これを通常の行列式として計算していく。
となるので2次元平面極座標におけるヤコビアンは次のように求まることになる。
上記の計算結果を入れれば、
よってデカルト座標系のは、ヤコビアンによる平面極座標変換によって以下のように求まることになる。
デカルト座標における微小面積が平面極座標系の座標系へ変換されるとき、今回求められたというヤコビアンをスカラ倍することによって上記のように同値になると考えればいい事になる。
具体的な例
ガウス関数
こうしてうまい具合にヤコビアンが求まったので今度は具体的な例として“ガウス分布関数”というのを扱ってみる。
無限区間において次のような分布をとる関数をガウス分布という。
上記の画像は指数関数を描画したものになる。
これをからまでの範囲において積分を実行すればどうなるかを考える。
答えを単刀直入に言うと次のような結果になる。
このためこれのことをガウスのインチキ積分などと言ったりするものがいるが実際にインチキでも何でもないことを証明してみるニダ。
まず積分する範囲をとおく。
そのを2乗したものに対して先ほど求まった平面極座標変換に置けるヤコビアン、
を適用するがここでとを入れ替えた次のような分布、
としても同じ値(積分領域)であるということはわかると思う。
なので次のように表現できることになる。
ここでを微分すると(変数変換をして)、
これより、
なのでこれを使って、
となるのでの2乗は次のように求まることになる。
は正なので
よって結果的に以下のように求まることになる。
ヤコビアン@関連ページ
- ヤコビアンA(作成編集中)
- 当サイトは主に物理に関する数学など、その他周辺も含めた少々ごった煮のウェブサイトです。 数理統計学−このコンテンツでは多変量解析において重要な考え方になる変数変換によるヤコビアン(関数行列式)について考察し、多次元における座標変換でその幾何学的な意味を導いていきます。
- 確率密度関数と変数変換
- 【数理統計学】様々な確率分布−数理統計学におけるいろいろな確率分布について考察していきます。このエントリーでは確率密度関数と変数変換におけるヤコビアンに関して考察していきます。