2013年12月29日

クエーサーとブラックホール

宇宙】のニュース

過去最大のクエーサー放出エネルギーを観測、太陽の2兆倍
http://www.afpbb.com/articles/-/2913865
ブラックホールの超高速ジェット、重粒子を含む可能性 豪研究
http://www.afpbb.com/articles/-/3003371

 

元々は2ちゃんの科学ニューススレから見つけてきたものなんですが結構面白い記事でしたのでスレ内のリンク先を引っ張ってきて取り上げてみました。
この内容だけでも非常に興味を引くと思いますが、さらにこうした事象における歴史的背景や数理論的な解釈などに関する解説なんかもあったらいいだろうなと思いましたので、今回はこれらの周辺知識についてやってみました。
クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

ハッブルの法則と宇宙の膨張

ドップラー効果とは?
簡単に説明すればこのドップラー効果というのは音の発生源の移動による周波数の変化を捉えたものです。
私たちの普段の生活の中においていうと、例えば近づいてくる救急車のサイレンなどに代表されるように観測者に近づいてくる時は高い音、そのあとの離れていくときの場合は低い音に変化するといったことなどは一般的な経験上によって容易に気がつくことかと思います。このようなサイレンの音が変化している様子をドップラー効果と呼びますが、実は光源についても似たような性質があることがわかっています。

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移


図の銀河から地球に届くサインカーブは光の波長をイメージしたものと考えてください。上図の波長の長さを定位置にある場合の波長の長さとすると、近づいている場合の波長は下図(a)のように周波数が短くなります。

 

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

逆に遠ざかっている場合においては図(b)のように周波数が長くなっていることがわかります。

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

 

このような時、光はその周波数が短くなっているときは青くクェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移、逆に遠ざかっているとき(波長が長くなっているとき)は赤くクェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移なります。このように光源が観測者の側から見た場合において長波長側にずれる現象を赤方偏移と呼びます。

 

20世紀の前半あたりにおいて40個ほどの銀河のスペクトルを調べたところ、大半の銀河について次のような結果がでて、大方の銀河は私たちの天の川銀河から遠ざかっているということがわかったのです。

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なぜこのようなことが起こっているのかその当時はよくわからなかったようです。
ちなみに私たちの住む天の川銀河に一番近くにある銀河がアンドロメダ銀河と呼ばれるものですが、このアンドロメダ銀河については、

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

ということがわかっており、遠い将来は天の川銀河と衝突をするといわれています。

 

そしてこれらの赤方偏移による周波数の違いを使って次のような式を考えます。
赤方偏移パラメーター

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

クェーサーの発見

1960年に、マーチン・シュミットという人によって星状の極めて明るい天体が発見される。

3C273の位置を特定 ”


この発見された(恒星状の)天体は直径が銀河系の大体1000分の一ほどの大きさにもかかわらず銀河系の何十倍も明るいというもので、そのため恒星状天体:クエサイステラー、略して“クェーサー”と呼ばれるようになりました。
ここで先ほど示した、赤方偏移パラメーターというのを使って調べてみると、zの値がきわめて大きいということを発見したようです。

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移が極めて大

実際の数値を見てみると、

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であり、これは光の速さの15%で遠ざかっていることになります。
またこの発見の前にJグリーンシュタインという人物により3C48の観測が行われており、それはクェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移という約37%もの赤方偏移で、これは光速のスピードの約3分の1に達する早さです。

クェーサー・・・・・非常に遠方に存在する天体

ではないかと考えられますた。

シュバルツシルトの半径

1916年、ドイツの天文学者でシュバルツシルトという人物が非常に重く小さな天体を予想し、その星の強大な重力によって光さえも脱出できない領域を考えました。
その領域(半径)をシュバルツシルト半径(クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移で表記)と呼び次のようになります。

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

このような光さえも脱出できないような天体のことを“ブラックホール”と呼び、上記クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移の左辺にある“M”はブラックホールの質量になります。
また、この半径でつくる球面を事象の地平面といったりします。これは光でも脱出できない領域であるので私たちはその内側の情報を得ることは当然出来ません。
  • クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移シュバルツシルド半径・・・脱出速度が光速に等しくなる半径
  • クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移・・・降着円盤

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

あるいは、
クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

【降着円盤のメカニズム】

降着円盤とは、星などの中心天体の周りにあるガスや塵などが重力エネルギーによって落ち込んでいく際に、中心天体の周りに形成される円還上の雲のような形をしたものをいいます。

 

クェーサーなどの非常に活動的な中心部を持つ銀河の中に落ち込んでいく場合、そのガスなどの星間物質は巨大な重力エネルギーによって高速運動をすることになります。このエネルギーが膨大な放射エネルギーに変換されることによりクェーサーが強大な光を発していると考えられ、この降着円盤によるエネルギー生成の仕組みがクェーサーの明るさの原因だと説明されています。

 

『では、その非常に活発なエネルギーの原因は何か?』
まだはっきりと断定出来ていないようですが現在ではクェーサーの強力な光度の源になっているのはブラックホールではないかと考えられています。
クェーサーの降着円盤によるエネルギー放射は通常の恒星などによる放射とは桁外れに大きく、それを説明するには大質量のブラックホールの存在を仮定しそれを取り囲むガスなどの物質が強大な重力エネルギーによる摩擦によって非常に強い光を生み出していると考えられるからです。

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

  • クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移:質量降着率

 

質量降着率の計算

最後にこの質量降着率を具体的に求めてみましょう。
無限遠からシュバルツシルド半径までの距離を考えると、無限遠でのポテンシャルエネルギーはクェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移
クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移半径での運動エネルギーとポテンシャルエネルギーは、

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2つの関係により

クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

 

無限遠からのポテンシャルエネルギーの減少分

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クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移:落下物体の静止エネルギー

 

このとき静止質量の12分の1を放射するとしその値をη=0.057とします。

放射されるエネルギー: クェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移

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としてクェーサー,クエサイステラー,ブラックホール,降着円盤,シュバルツシルト半径,赤方偏移を求めると、

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よって

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10の26乗分となりかなりの数字であることがわかります。

クエーサーとブラックホール関連ページ

平行軸定理と慣性モーメント
平行軸の定理と慣性モーメントの話。慣性モーメントとは物体(剛体)の回転のしづらさ、回りだす変化のしにくさを示す物体の物理的な特性のことだと考えることができるでしょう。またさらに別の言い方をすれば回転の方程式といえるかもしれません。このエントリーでは円錐の慣性モーメントを例にして説明していきます。
円錐の慣性モーメントの導出
円錐に関する慣性モーメントの計算と考察。 任意高さにおける円錐中の円盤とみなした部分を相似関係によって求め目的とする円錐の慣性モーメントを求めていきます。
可逆・不可逆のエントロピー
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コンプトン散乱A
外郭軌道電子との衝突によりエネルギーの減少した散乱光子をコンプトン散乱光子と呼び、さらにはこのような散乱をコンプトン散乱効果などと言ったりします。
コンプトン散乱@
コンプトン散乱とは、光子がターゲットとなる原子の外殻軌道電子と衝突して衝突前後においてエネルギーの変化を起こさせ、光子が持っている運動エネルギーを軌道電子に与えて外殻の軌道電子を原子の外に飛び出させる現象を主に言います。
光電効果とコンプトン効果
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エントロピー増大測
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エントロピー
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コリオリ弾軌道計算-補遺
当サイトは主に物理に関する数学など、その他周辺も含めた少々ごった煮のウェブサイトです。 数学分野に関しての趣旨としては、通常のテキストでは割愛されてしまう内容などを詳しく記述し、さらには難しい説明をするのではなく、わかりにくい内容をいかにわかりやすく伝えるか━など、そういったウェブコンテンツならではの利便性と機動性を生かしたサイト作成を主眼としています。
長距離射程におけるコリオリ弾軌道計算
初歩的な力学の分野において、慣性系に関する話の中にコリオリの力というものがあります。この“コリオリ”とは人の名前であり地球が回転することによっておこる見かけの運動力を、回転座標上で移動したときの移動方向と垂直な方向に受ける慣性力の一種を数式で表現したものになります。 このページでは実際にアサルトライフルなどの軽火器射撃訓練を行った経験がある当Webサイト管理人が、射撃検定1級取得者の立場という観点からも含めてコリオリ力を考慮した長距離射撃などについて考察します。
くり抜き円盤の慣性モーメント
物体(剛体)の回転に関する物理的特性を示す用語で“慣性モーメント”というのがありますが、それに関連する内容でで“平行軸の定理”というのがあります。 これは物体の軸に関しての慣性モーメントがわかっているとき、これに平行な位置における軸に関しての慣性モーメントを求めるとき使われる計算法になります。
コリオリと軽火器の話
初歩的な力学の分野において、慣性系に関する話の中にコリオリの力というものがあります。この“コリオリ”とは人の名前であり地球が回転することによっておこる見かけの運動力を、回転座標上で移動したときの移動方向と垂直な方向に受ける慣性力の一種を数式で表現したものになります。 このページでは実際にアサルトライフルなどの軽火器射撃訓練を行った経験がある当Webサイト管理人が、射撃検定1級取得者の立場という観点からも含めてコリオリ力を考慮した長距離射撃などについて考察します。

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