境界値問題

熱伝導方程式

熱伝導方程式による境界値に関しての問題とその解法

熱伝導方程式(拡散方程式)における重ね合わせの原理

未知関数を含まない関数を分離できないときを同次といいその同次線形偏微分方程式においては“重ね合わせの原理”というのが成り立ちます。

 

つまりa1 a2 seriesがその方程式の解ならばその線形結合も解となります。

 

次のような式を考えてみましょう。

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

※)20211107訂正。右辺変数がvではなくuになっておりました。訂正しお詫び申し上げます。

 

変数分離法を使って、vxtの関数として二つに分離します。

 

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

 

これを上式に代入すると、

 

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

さらにここでxの項とtの項を以下のように左右二つに分類分けをします

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

 

式の両辺をよく見てみるとそれぞれがxtだけの関数になっていることがわかると思います。

 

 

上式のようにxtを独立に考えても等式が成り立つためには両辺の値が定数であると考えればよく、この定数をそれぞれの式に対して、

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

 

と置くと、

 

熱伝導方程式,変数分離形

 

という2つの方程式で表せます。

境界条件の付与

これを以下に示す条件−

 

境界条件

境界条件

 

および、初期条件、

 

初期条件

 

 

のもとにその解を求めてみましょう。

 

境界条件

境界条件

 

と考えられるので、

 

境界条件

 

 

という2つの条件を満たすものをまず求めます。

 

 

まず、

 

熱伝導方程式,変数分離形微分方程式

 

 

の解で境界条件、

 

境界条件

 

 

を満たすものは次の3種類が考えられます。

ρ=0のとき
境界条件ρ=0になるので一般解は、

境界条件ρ=0

境界条件ρ=0

境界条件ρ=0

上記式をさらに積分していけば、

境界条件ρ=0

結果次のように求まります。

境界条件ρ=0

条件により、

境界条件ρ=0

さらには境界条件ρ=0の条件、

境界条件ρ=0

も勘案すれば、

境界条件ρ=0

は、0となり解としては意味がありません。。
ρ=p^2のとき

 

一般解は、

 

境界条件ρ=p^2

 

 

となるので、条件より、

 

境界条件ρ=p^2

 

 

となります。

 

この場合も再び、

 

境界条件ρ=p^2

 

 

0となるので(i)と同じように解としては意味がありません。

境界条件ρ=-q^2のとき

 

 

では最後のρ=-q^2はどうなるでしょうか?実際にやってみると、

 

 

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

となるので解は次に示す、

 

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

というような複素解になります。

 

実数部0、 虚数部±qなので特性方程式は、

 

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

 

となり、さらに条件から、

 

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

より、

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

さらに、

 

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

より、

ρ=-q^2の時の熱伝導微分方程式

 

 

ここでBについて考察してみると、このときB ≠ 0BsinqL=0の式が成り立つためにはsin qL = 0でなければなりません。

 

その条件とはサインの性質により、

 

 

 

q = npi over L

 

でなければならないということがわかります。

 

 

この結果、条件を満たす熱伝導特性方程式の解は、

 

 

熱伝導特性方程式

 

 

熱伝導特性方程式

 

 

となり、

 

さらにこのとき、

 

熱伝導特性方程式

 

 

の式は、

 

熱伝導特性方程式

 

 

ここで式を見やすくするために

 

熱伝導特性方程式変数変換

 

と置きます。

 

すると、

 

熱伝導特性方程式

 

 

同次方程式がでてきたのでこれを解けば、

 

熱伝導特性方程式の同次微分方程式

 

熱伝導特性方程式の同次微分方程式

 

熱伝導特性方程式の同次微分方程式

 

 

熱伝導特性方程式の同次微分方程式

 

 

ここでXn(x)Tn(t)の定数を一緒にすれば、

 

熱伝導方程式同次方程式

 

 

熱伝導方程式同次方程式

熱伝導方程式同次方程式

 

 

ここでvnの重ね合わせ(線形結合)を考え、初期条件を満たすようにすると、

 

 

熱伝導方程式同次方程式

 

 

熱伝導方程式同次方程式

 

 

さらには、

 

 

熱伝導方程式同次方程式

 

 

という条件により、

 

熱伝導方程式同次方程式

 

 

ここで半区間のフーリエ正弦級数を思い出すと、

フーリエ正弦展開公式

 

というのがあったのでこれを使うとフーリエ積分は次のように表現できます。

 

フーリエ正弦展開公式

 

 

よって求める解は次のようになります。

 

フーリエ積分

 

以上のことを踏まえこの一次元熱伝導方程式の実際のモデルを計算してみましょう。

【例題】

初期条件

 

フーリエ積分例題:初期条件

 

で、

境界条件

 

フーリエ積分例題:境界条件

 

 

【解法手順】

このとき、

 

フーリエ積分例題:境界条件

 

 

なので、定数Cn

 

フーリエ積分定数式

 

 

これを解いていきます。

 

 

フーリエ積分定数式計算過程

 

 

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定数式計算過程

フーリエ積分定式数計算過程

 

フーリエ積分定式数計算過程結果

よってフーリエ積分定式数計算過程の式、

 

 

フーリエ積分定式数計算過程

 

 

に代入すると、

 

フーリエ積分定式数計算過程

【問題】

次のような熱伝導方程式、

 

熱伝導方程式問題

 

を、次に示す初期条件と境界条件をみたすよう解いてみましょう。

 

  • 初期条件

熱伝導方程式問題初期条件

 

  • 境界条件

熱伝導方程式問題境界条件

 

【答え】

熱伝導方程式問題なので、定数Cnは、

 

熱伝導方程式問題

 

ここで三角関数の性質、

 

三角関数公式,サインサイン

 

を使えば、

 

熱伝導方程式の定数解

 

 

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解


 

熱伝導方程式の定数解


 

熱伝導方程式の定数解


 

熱伝導方程式の定数解


 

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

 

 

上式の結果にn=1を代入すると0になると思いますがここで先ほどの途中の式、

 

 

熱伝導方程式の定数解


 

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

 

 

において実際にn=1を代入するとどうなるかやってみましょう。

 

 

上記の右辺にn=1を代入すると、

 

 

熱伝導方程式の定数解

 

 

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

熱伝導方程式の定数解

 

 

熱伝導方程式の定数解

 

 

 

熱伝導方程式の定数解

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